無添加ブームに乗る前に知っておきたい、あたり前のこと

読書の秋と言うにはまだ蒸し暑い日が続いていますが…

久しぶりに本のご紹介です。

ずいぶん前に購入しておきながら、最近になってようやく読了した本。

長村教授の正しい添加物講義

「文系のための」みたいな、いやらしい言葉が付いていないところが、さすが大学で教鞭をとられる方というか、品格を感じますね。(←何様でしょう。)

著者は「文系」ではなく「化学と縁遠い人」という表現を使っていますが、そんな人にこそ読んでほしい一冊です。

その科学的根拠、説明できる?

そういう私も、「文系」や「理系」といった区別で言うと、完全に「文系」です。

逆に夫は「理系」です。

理系男子の魅力は別の機会に話すとしまして…

基本的に、夫と話すときは理論的に説明できないことを言わないように気を付けています。(ついでに言うと、感情的な発言で喧嘩を仕掛けることも避けています。)

例えば、「○○を飲むと妊娠力がUPするらしい!」とか。

もし話すときは、どうやって被験者を集めて、実験の条件はこうで…みたいに説明できるようにしなければ、と思っています。

これは分かりやすくちょっと大げさに書いていますが、本人は口に出さなくてもきっと心の中で疑問に思っているに違いありません。

 

前置きが長くなりましたが…

世の中では科学的な根拠が希薄なことが、いとも簡単に信じられて常識のようになってしまうことがあるんだなとあらためて再認識させられたこちらの本。

私はナチュラルフードコーディネーターという資格の勉強をしたこともあって、「好きな言葉は無添加です」といっても過言ではないくらい、「無添加」という言葉に弱い人間でした。

ちょっとでも「怪しい」成分が含まれていたら悪者扱い。

でも、「怪しい」と思う根拠を人に説明できるかというと、そんなことはありません…。

天然=安全?

この本では「添加物」の中でも主に保存料や化学調味料の話を取り上げていますが、そこで度々出てくる言葉は「量の問題」です。

「無添加」で製造された食品は雑菌や酸素に対して完全に無防備な状態であり、重大な健康被害を引き起こす可能性があるのに、ほんの少し、「適正量」の保存料を使用することに抵抗を感じてしまう今の社会。

悪者扱いされる添加物の中には、人間が通常食事で摂取する量を考えたらありえないくらいの量で実験をして、「ほら、こんなに危険」と言われているものも。

それでも、「量」の概念がないと「そんなに危険なのか」と納得してしまう人が大半ではないでしょうか。(かく言う私もそうでした。)

大量に摂取したら危険、という意味では塩でも砂糖でも同じはずなんですけどね。

むしろ大量に摂取しなくても危険なものも身近にはあります。

私もこちらの本を読んで知りましたが、白いんげん豆も生で食べると瀕死に至る消化器障害が発症するそうです。

これはこの豆に含まれるレクチンというたんぱく質が原因とか。(その他、身近な食品に含まれる発がん性物質についてもこの本の第3章に書かれています。)

そこで考えるのは、

「塩は大量に摂取したら危険だから、ほんのちょっとでも摂取しないようにしよう」と考える人はどのくらいいるのか

「白いんげん豆は生で食べると危険だから、加熱してもちょっと不安」と思う人はどのくらいいるのか

ということ。

こう考えてみると、「天然のものは安全、化学的に合成したものは危険」といった考えが頭のどこかにあるという事実に気づかされます。

そして、目に見えないカビには無頓着で、目に見える添加物表示には異様に警戒感を示すという指摘には無添加万歳だった私でも納得。

しかしそうは言っても、「発がん性物質」とか言われると気になるんですよね。

「量」の概念って、分かってはいてもなかなか呑み込めない部分もあるというか…。

著者の長村教授の言葉で「なるほど!」と思ったのは、「量の有する意義の分からない人は、経済の世界で言えばお金の単位が分からない人と同じである」ということ。

「100円と100ドルの区別がつかない人は経済を論ずる資格がないように、化学の世界で量を無視した議論をする人が、化学的な問題に具体的に介入するといたずらに社会を混乱させる」と。

100円と100ドルの違いと言われると、たしかに!と思います。

A店のバナナは1本100円、B店のバナナは1本90ドル。

B店の方がお得じゃん!なんて思うこと、ありませんもんね。

最近、本屋に並ぶ健康関連の書籍や女性週刊誌の中づりなどで目にする「○○が危険!」という言葉。

ついつい信じてしまいますが、本当に信じるに足るものでしょうか。

この本では他にも、ある人の本で書かれた、とても科学的とは言えないような実験と結論によって、世間から悪者扱いされてしまった企業の話も書かれています。

私はそちらの本を読んでいないので具体的な言及は避けますが、こんなインチキによって誠実に努力している企業が批判にさらされることもあるのか、と呆れると同時に、情報を受け取る側の知識や意識が問われていると感じました。

ずっと「無添加」ばかり追い求めていた私も、あらためて冷静に考えるきっかけとなった一冊です。

***

ところで、こちらの本の本質とは別の話ですが…

この本はKindleではなくソフトカバーの単行本で買ったのですが、Kindleに慣れてしまうと普通の本がものすごく不便に感じる…!

Kindleで読むときは、参考になる一文をハイライトして、あとでハイライト箇所だけ見直すということができるのですが、本に直接ペンでハイライトするのに抵抗のある私は何度も同じようなページを行ったり来たり…

ふせんも使ってみましたが、電車で立ち読みしながらふせんを貼るのもなかなか面倒で。。

Kindleの良さをあらためて感じました。

他の電子書籍を使ったことがないので比較はできませんが…
Kindle生活、おすすめです!